未成年者飲酒防止教育 2018年度

2018年度未成年者飲酒防止教育〝学校コンクール〟を開催

未成年者飲酒防止を目的として、ビール酒造組合が実施する「2018年度未成年者飲酒防止教育〝学校コンクール〟」の応募受付が開始された。学校・地域で未成年者の飲酒防止問題に向き合い、考える意識を高めるとともに未成年者飲酒が及ぼす健康への影響の理解促進を目的としている。コンクール事務局では「アルコールパッチテスト」など各種ツールの貸出・提供を行っており、学校が取り組みやすい環境づくりに貢献している。昨年度のコンクールで最優秀賞を受賞した2校を訪ね、取り組みの成果を聞いた。

主体的な判断力と態度を育むコンクール

2014年にアルコール健康障害対策基本法が施行され、アルコール健康障害対策推進基本計画には「学校教育において、アルコールが心身に及ぼす影響などを正しく認識させることによって、未成年の段階では飲酒をしないという判断力と態度を育てる」ことが明記された。
 ビールメーカー5社で構成されるビール酒造組合は2002年より「未成年者飲酒防止ポスター・スローガン・学校賞募集キャンペーン」を実施してきた。
 基本法制定に伴い、2017年度より「未成年者飲酒防止教育〝学校コンクール〟」(後援=内閣府・警察庁・国税庁・文部科学省・厚生労働省ほか)と名称を改め、授業や特別活動などの実践事例を幅広く募集することとした。
 コンクールへの参加と表彰を通して学校、家庭、地域の未成年者の飲酒防止に対する意識を高め、未成年者飲酒が及ぼす健康への影響などの理解を促すのがねらいだ。昨年度は全国の小・中・高校から計72校の応募があった。
 審査は▽課題の着眼点▽取り組み内容の独創性▽家庭や地域への影響度▽継続性の4つの基準から行われた。選考委員会(東ちづる審査委員長)による厳正な審査の結果、小学校部門、中学校部門、高等学校部門から最優秀賞各1校、優秀賞各3校、中学校部門・高等学校部門から審査員特別賞各1校の合計14校が選ばれた。
 昨年11月19日に東京の野村コンファレンスプラザ日本橋で開かれた表彰式では、最優秀賞受賞校から指導教員と児童生徒が参加し、実践内容と成果をプレゼンテーションした。
 ビール酒造組合の布施孝之・会長代表理事は「どの学校も創意工夫した熱心な取り組みで、審査は白熱した中で行われた。応募したすべての人の思いが未成年者飲酒防止の輪を広げ、取り組みのさらなる充実、発展につながれば」と述べた。
 東ちづる・審査委員長は、「未成年者飲酒防止教育は一方的な指導ではなく児童生徒自身が理解して納得することが重要」とし、「自分の頭で考えて工夫して実践することが、主体性や自発性、能動性を発揮することにつながる」と述べた。この日の子どもたちのプレゼンテーションを受けて「そのまま企業や大学にプレゼンできる。他校へも提案してほしい」と高く評価した。

授業を盛り上げる応援ツールを提供

同組合では子どもたちが自分の健康について考えるきっかけとしてだけでなく、思考力を育み、表現力を磨く機会としてコンクール活用を広く呼び掛けている。
 希望する学校にはお酒が飲める体質かどうかを判断する「アルコールパッチテスト」キットやお酒に関する知識を楽しく学べる「ビールすごろく」の無料提供、視覚のゆがみを体験できる「飲酒状態体験ゴーグル」の貸出を行っている。活用次第で体験を通して主体的に学ぶ授業が展開できそうだ。

2017年度受賞者

コンクール応募要項

募集期間
2018年6月1日(金) ~ 9月28日(金)必着
応募資格
全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校(学級)
募集内容
学校での「未成年者飲酒防止」に関する取り組み
必要事項
1.住所(郵便番号) 2.学校名(全校/学年) 3.電話番号 4.応募者氏名
※書式・フォーマットは問いません。上記の必要事項を記載の上で、学校での取り組みで使用した資料のコピー等や、当コンクールのホームページからエントリーシートをダウンロードしてご応募ください。併せて、活動の様子がわかる写真があればご提供をお願いします。(1~3点)

●郵送での応募先

〒108-0023 港芝浦郵便局留め
「2018年度未成年者飲酒防止教育学校コンクール」事務局

●メールでの応募先

camp@brewers.or.jp

●報賞

最優秀賞:
小学校・中学校・高等学校・特別支援学校(学級)各1校(30万円相当のカタログ式ギフト)
優秀賞:
小学校・中学校・高等学校・特別支援学校(学級)各3校(10万円相当のカタログ式ギフト)
審査員特別賞:
小学校・中学校・高等学校・特別支援学校(学級)各1校(5万円相当のカタログ式ギフト)

●発表

入選校には事務局より直接連絡。また、ビール酒造組合ホームページ上で発表

●プレゼンテーション・表彰式

2018年11月23日(金)東京で開催予定

●未成年者飲酒防止教育学校コンクールホームページ

http://www.brewers.or.jp/activity/camp/index.html

●お問い合わせ

学校コンクール事務局
TEL: 03-5443-1232
(2018年5月15日(火)~2018年9月28日(金) 土・日・祝日を除く 10:00~18:00受付)

埼玉・川口市立差間小学校
勧められても「ノー」と言えるスキルを習得
小学校部門最優秀受賞
埼玉・川口市立差間小学校
ライフスキル育成の一環として

昨年度創設された小学校の部門では、川口市立差間小学校(和久井功雄校長)が最優秀賞を受賞した。
 実践者は鈴木真由美養護教諭。自分の感情や行動をコントロールし他者とコミュニケーションする力をつける市独自の「ライフスキル教育」の一環として、6年生の総合的な学習の時間と保健において、担任とのチーム・ティーチングで取り組んだ。
 未成年者が飲酒してはいけない理由を知識と体験から学び、ロールプレイングで「お酒を勧められたときの断り方」を学ぶ実践的な内容が評価された。

パッチテスト後にロールプレイを導入

まず人体がアルコールを分解する仕組みを座学で学び、コンクール事務局から取り寄せたアルコールパッチテストを児童全員が実施した。
 テストの結果、1クラスに10%、お酒が飲めない体質の児童がいることがわかった。この数字は「日本人でまったく飲めない体質の人は約10%」と学んだデータと一致するため、子どもたちの納得感が高まった。
 そのうえで周囲からお酒を勧められたときの断り方をグループで考え、ロールプレイングに挑戦した。
 前時までに、教員のアドバイスを受けながら断り方を5パターン以上考えていた子どもたち。本番では親戚役の教員がしつこく児童を飲酒させようとする。
 「お祝いだから少しぐらい」といった誘いの言葉に児童は「未成年だから飲めません」「法律を破りたくないから飲めません」など、理由を添えて毅然とした態度で断ることができた。

自己肯定感の向上が主体的な学びにつながる

4年前の着任当初から児童の自己肯定感に課題を感じていた鈴木教諭。「やればできる」と自信を持たせて中学に送り出したいと考えていたという。
 「自分の体のことになると子どもたちは興味がわく。自分の体の主人公は自分だ、という感覚を持てれば自己肯定感は高まり、正しく判断する力の育成につながる」(鈴木養護教諭)
 学習のまとめとして児童は「20才になった自分へ」と題して決意作文を書いた。そこには「大人でもお酒の適量を知らないと体に害が出る。だから子どものときから自分の体質を知り判断力を持つことが大切だと思った」など、学んだことを自分の将来につなげる視点が見られた。

地域への広がりを期待し

鈴木養護教諭は、6年生での未成年者飲酒防止教育の授業を続けて4年目になる。未成年者飲酒防止教育を受けた中学生・高校生が増えていくことで、興味本位の問題行動が減少することを期待している。
 和久井功雄校長は「本校の卒業生が中学校で保健委員として積極的に活動していると聞く。小学校から未成年者飲酒防止教育に継続的に取り組むことが判断力を備えた生徒の育成につながるはず」と話す。

  • 消毒用アルコールを用いたアルコールパッチテスト
  • ロールプレイでお酒を断る児童

新潟・新潟県立松代高等学校
アンケートで生徒の意識把握、依存症経験者の講話も
高等学校部門最優秀受賞
新潟・新潟県立松代高等学校
生徒に意識調査を実施 3割「断る自信ない」

高等学校部門では新潟県立松代高校(内田卓利校長)が最優秀賞を受賞した。未成年者飲酒に関するアンケート調査を実施し、依存症回復施設から講師を招いて話を聞くなど、生徒の意識を把握したうえで地域資源を活用する実践が高く評価された。
 新潟県は酒どころとして有名だ。生徒の住む地域でも季節ごとの伝統行事があり、大人にお酒がふるまわれる場面に生徒が居合わせることも少なくない。
 卒業後、未成年のうちは飲酒をしないと自分で判断できるか、また20歳以降も自分の適量を知り正しくお酒と付き合っていけるかどうかは、高校段階までの知識や理解度にかかっている。その意味で高校での未成年者飲酒防止教育は生徒の健康を守る「最後の砦」になる。
 そのような課題意識から村山真紀養護教諭は1・2年生を対象とした3時間の授業を計画した。
 実践に先立ち実施した事前アンケートでは、6割以上が「未成年の飲酒は成長や健康に害があるから飲むべきではない」と回答したものの、「お酒に誘われたら断る自信はあるか」の質問に3割の生徒が「どちらかといえば自信はない」「まったく自信はない」と回答した。
 そこで、未成年者の飲酒による事件や事故を紹介し、飲酒ゴーグルによる酩酊状態の体験や、飲酒を勧められたときの対応についてブレーンストーミングを行った。
 そののち、アルコールの脳への影響に焦点を当てた映像資料を視聴し、最後にアルコール依存症経験者で依存症回復施設NPO法人新潟マックの施設長による講話を聞いた。
 「生徒は小・中学生のときから何らかの形で未成年者飲酒防止教育を受けてきており〝いけないこと〟という認識がある。高校段階ではブレーンストーミングや講話を通じてアルコールが心身に及ぼす影響を実感できる内容にできた」(内田校長)

ブレーンストーミングで対応を考える

グループワークでは架空の男子生徒のケースをもとに、「なぜ飲酒をしてしまったのか」「どのように断ればよかったか」を生徒自身が考え、意見をまとめた。「このケースは誰にでもよくあるパターンだと思うので、自分も気を付けたい」等のアルコールとの付き合いを自分ごととして捉えた意見が出され、定着への一歩になった。
 この日の活動の様子は「保健だより」に詳しく掲載した。取り組みを学校外に積極的に発信すれば、家庭や地域の理解につながる。今後はロールプレイングなども活用しながら未成年者飲酒防止教育を継続する予定だ。

  • 飲酒をしてしまった架空の男子生徒のケースをもとに原因や対応法をディスカッション
  • 依存症回復施設NPO法人新潟マックの施設長による経験談を交えた講話

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過去の連載記事
目次 未成年者飲酒防止教育
  • [1] 未成年者飲酒防止教育 2018年度