海洋教育 1

シリーズ 海洋教育

海洋教育

海に囲まれた日本では、海洋教育という形で、その知識を児童・生徒に伝えることが重要とされる。政府の「海洋基本計画」にも、小中高で「海洋に関する教育を充実する」と明記されています。ここでは7月の第3週の月曜日、「海の日」に合わせて、日本財団、笹川平和財団海洋政策研究所、東京大学海洋アライアンスの協力のもと、2017年7月17日「日本教育新聞」で「海の日」特別企画で掲載した紙面内容に沿って、海洋教育の現状と今後について紹介します。

「海」を教材とした 教育活動〝海洋教育〟とは

日本は言うまでもなく海に囲まれた島国。世界に誇る魚食文化があるなど、海の恩恵をたくさん受けて発展してきた。海からたくさんの恵みを受けると同時に、東日本大震災での津波のように、大自然の驚異と隣り合わせに生きている。

しかしながら、魚の消費量の減少、海水浴客数の減少、漁業の後継者不足や海技従事者の減少など、日本人の海離れが進んでいるという指摘もある。また、世界中の海はつながっており、海洋資源の開発や環境問題など、国際的な視野をもち、世界的枠組みの中で解決しなければならない問題もある。海という存在は、私たちにとって、密接に切り離せないものであることに気づかされる。「海」をほんの少し深く見るだけでも、これだけ様々な視点が浮かびあがってくる。「海」には豊かな学びの可能性を秘めている。

平成19年の海洋基本法、平成25年の第2次海洋基本計画に学校教育における海洋教育の推進・充実がうたわれた。昨年、海の日に総理大臣は「2025年までに全ての市町村で海洋教育が実践されることを目指す」と発表。しかし、学校現場の海洋教育の認知度はあまり高くはない。また、学校現場からも海離れが進んでおり、臨海学校を実施している学校は減少し、海を授業で取りあげることもほとんどなく、海洋に関わる教育が十分ではないという現状がある。

そうした中、日本財団、笹川平和財団海洋政策研究所、東京大学は協働で、学校に対して支援を行う「海洋教育パイオニアスクールプログラム」を昨年度より実施し、海洋教育の普及・推進に努めている。

「海と共に生きる」ことを基礎理念として「海に親しむ」、「海を知る」、「海を守る」、「海を利用する」という4つのキーワードを柱に、「生活・健康・安全」、「観光・レジャー・スポーツ」、「文化・芸術」、「歴史・民俗」、「地球・海洋」、「物質」、「生命」、「環境・循環」、「資源・エネルギー」、「経済・産業」、「管理」、「国際」の12の分野に関する学習を展開。それぞれの教科に内包される内容もあれば、教科横断的に扱うべき内容もあり、自然科学から人文科学、文化・芸術にわたる幅広い学習内容になっている。12分野全てを行う必要があるのではなく、ほかの教育活動とバランスをとりながら、各学校において実施できる学習に取り組んでいる。

新学習指導要領にも対応 129校がパイオニアスクールに参加

新学習指導要領においても、主体的・対話的で深い学びの実現がうたわれており、基礎的・基本的な知識、技能を活用した、探求的な学習の更なる充実が大切となる。高等学校では、さらに幅広いものの見方、考え方を学ぶ科目の新設が決まっている。同プログラム運営事務局では、「未来が見通せない変化の激しい現代社会をたくましく生きていく次代の若者の育成に、海洋教育はとても有意義な教育活動」と考えている。

昨年度は64校、今年度は129校がパイオニアスクールに参加して海洋教育を実践。教員による創意工夫を生かした素晴らしい実践が増えている。海洋教育を通して学校同士、地域と学校、生徒同士など、さまざまな交流が活発になり、一層充実した教育活動に発展を目指している。

洋教育を実施してきた学校はもちろん、「海が近くにない」、「今のカリキュラムに新たに加えるゆとりはない」などの理由で今まで実施していなかった学校も、今できることから「海」を教材とした教育活動を始めてほしい。同事務局ではそうした願いのもと今後も活動を広げていきたい意向だ。
(情報提供=日本財団、笹川平和財団海洋政策研究所、東京大学海洋アライアンス)

「海洋教育パイオニアスクール」実践事例
昨年度「海洋教育パイオニアスクール」として登録された学校から、工夫されたさまざまな実践が報告されている。ここでは3校のユニークな実践を紹介します。

気仙沼市立面瀬小学校 「海と共に生きる ~港町 気仙沼の海を見つめよう~」

気仙沼市立面瀬小学校は、豊かな三陸の海と水産業を素材に、自然条件と生態系との関連や自然環境と生活の関わりを探究する活動を実践しました。

総合的な学習の時間、社会科、国語科、生活科といったさまざまな教科を横断しながら、海辺の環境と人々の生活との関わりについての考えを深めました。

1年生は国語科での「いろいろなふね」という教材文や海上保安船の見学などを通して乗り物についての学習と生活科での海で拾った貝殻や石を使った工作、3年生の社会科では、実際にスーパーマーケットを訪れての産地調べやインタビュー調査、4年生の総合的な学習の時間では、山・川・里・海のつながりを強く意識させるための川の源流と河口域の海の探検活動や様々な体験活動を取り入れました。

これらの活動を通して、子どもたちが、自分たちの生きる地域を深く見つめ、未来像を話し合い、広く発信する活動を充実させ、主体的に学び、実践する力を育てることができました。

逗子開成中学校・高等学校 海洋人間学 海洋実習活動を通じて海洋の営みを体感し、人間の生活と海洋の関係を捉え直す

目の前に逗子海岸が広がる逗子開成中学校・高等学校は、総合的な学習の時間、技術・家庭科、保健体育などの教科で海を体感し、認識を深める学習を展開しています。

中学校3年間を通じて海洋実習活動(ヨット帆走・遠泳)に取り組む生徒たちは、海洋の営みを体感し、自分の力だけで大自然に向かう経験を積み重ねるなかで大きく成長します。さらに体験のなかで人間に海が与えてくれる恩恵と、自分たちの力の及ばない、得体の知れない大きな存在である海への畏敬を感じとることで、自分(人間)にとっての海の在り様や、海に対峙した自分(人間)の在り様を考察し、人間の生活と海洋(自然環境)の関係を捉え直す、深い学びを実践しています。

また、実習活動と平行して、海の生き物、地球物理学的な海、海上交易や海が育んできた文化など、海洋に関する講義を行い、幅広い知識や教養を深めています。このような講義で学問研究の奥深さや面白さに触れた生徒たちは知的好奇心を刺激され、海を通して普段の学習に対する視野を広げる機会にもなっています。

東京大学教育学部附属中等教育学校 課題別学習「海(Sea)」
海を介して人を知り、人を学び、異なった価値からの「生きる力」を育むカリキュラム開発

東京大学教育学部附属中等教育学校の総合的な学習「課題別学習(海/Sea)」では、1年を通して前期課程3年生、後期課程4年生(中学3年、高校1年に相当)の23名が「海と人との関わり」をテーマにした学習を行いました。

まず生徒それぞれが「海と人と社会」に関わりのある自由課題テーマを主体的に設定して調べ学習を行ったあと、沖縄と東京の人たちへインタビューを行いました。沖縄での体験学習では、自分たちの生活している東京とは異なった地域社会に触れ、見て、聞いて、行動し、そして考えることで、島国の人それぞれの海との関わりを探求しました。また、それらの体験を活字、ことば、イラストで表現しました。さらには「二つ目の対話」と題し、東京に住んでいる人を対象に、自分たちでインタビューしたい相手を探し、「沖縄と東京に住む人と対話(二つの対話)」を課題として、生徒たちの協働作業による「海と人とのかかわり」についてのドキュメンタリー映画を制作しました。

「海と人との共生」をさまざまな分野(自然、生活、文化など)から探求的に学び、資料の読解、フィールドワーク、インタビュー、映像制作といった方法を通して子どもの生きる力を育成することを目指したこのカリキュラムには、海洋教育と探求学習、ディープ・アクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)の可能性が示されています。

詳しくは「海洋教育パイオニアスクール」で検索。そのほかの実践事例も多く掲載しています。


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